2011年08月23日

次期常務委員を予想してみる2

 前回は前提となる条件を整理しないまま、ダラダラと書いてしまいましたが、要約すると、現役政治局委員の内で、来年10月に開催予定の党大会時点で67歳以下の10人で常務委員7つのイスが争われるだろう、となります。

 さて気になる顔ぶれですが、習近平と李克強は失脚クラスの失政か、誰かにハメられるか、病死でもしない限り総書記、総理にそれぞれ就任するのは当確です。序列は十五大からの慣例で、習が1位、李が3位というのも確定。

 習近平は糖尿病が危なそうなので、李克強が逆転を狙うなら王老吉に砂糖をこっそり足しておけば良いかと。

 次に、次期常務委員に昇格する資格のある、政治局委員10人の簡単な説明です。なお、李源潮のように太子党で団派という御仁もおりまして、十七大での引き立ては胡錦濤によるものですが、風向き次第で太子党に寝返る可能性はありますから、単純にカラーリングできないのです。どっちに転んでもいいようにリスクヘッジするのが大人ですから。

■王楽泉 中央政法委副書記(第二位)
 1995年から新疆ウイグル自治区党委書記、新疆生産建設兵団第一政治委員を15年務めた新疆王の異名を持つ実力者、でした。

 2009年にウルムチ市で「ウイグル騒乱」が発生すると、その責任を負わされた形で解任。政治局委員の地位こそ確保したものの、格下の中央委員である孟建柱より序列が下の中央政法委副書記(第二位)に左遷されており、常務委員になれる要素がありません。終了候補の最有力です。

■王岐山 国務院第四副総理(金融、貿易)
 90年代は中国四大銀行の頭取を務め、広東省副省長時代にアジア通貨危機下で不良債権を問題を処理し、SARS隠蔽でお鉢が回ってきた北京市長として事態収束に素早く動くなど、有能な官僚であり、金融通。アメリカとの関係もよろしい。

 副総理としては序列は一番低いものの、担当する分野は目立つ金融や貿易で八面六臂の活躍を見せ、何をやってもイマイチな李克強が評価を落とす中総理候補とも言われましたが、やはり常務副総理として李克強を支えるのだと思います。

 個人的には髪の毛が2323でないのが心配です。常務委員は2323じゃないとね。載ってるだけじゃダメ。久々の2323でない常務委員誕生となるか。

■劉雲山 中央宣伝部長
 93年から中央宣伝部副部長として丁関根に9年、正部長として李長春9年仕えている宣伝部門のナンバー2(トップは李長春)。太子党大躍進なら左旋回に欠かせない人材ですし、他に適任者もいない事から、李の後を襲って宣伝部門トップ(中央精神文明建設指導委員会主任)になる可能性はきわめて高いものと思われます。

■劉延東 国務委員(序列一位、教育、科学技術)
 中央統戦部長、全国政協副主席、文教担当の国務委員を歴任する女性唯一の政治局委員。通称ババア。幹部の子弟しか入れない曾慶紅の母・鄧六金院長の烈士子女保育院に預けられていた太子党でもあります。

 共青団時代に胡錦濤に仕えた引きで、失脚した陳良宇(上海市党委書記)の後任や十七大で常務委員入りがささやかれましたが、いずれも果たせず。政治局委員ながら国務委員止まりなのと、担当分野が他に比べて弱いので、ババアが昇格するなら全国政協主席しかありません。

■李源潮 中央組織部長
 共青団、青聯と胡錦濤に近い経歴を持つ団派で、十七大で中央候補委員から政治局委員に抜擢。党中央の人事を一手に握る組織部長の要職にあり、父は上海副市長という太子党。日中友好議連訪中に続いて北朝鮮を訪問し金正日と会見するなど、いよいよ顔を売る段階に入ったのでしょうか。

 十八大時点で61歳であり、最長で2期10年務められるので今回は見送りも可能ですが、習近平の次に意中の人を送り込みたい胡錦濤としては、常務委員入りさせ露払いに使うのでは。組織部の前任者である賀国強の後を襲って中央紀律委書記が妥当かと。

■汪洋 広東省党委書記
 李克強、李源潮と同じ団派で、労働者上がりという太子党とは対極にいる人物。安徽、重慶、広東と地方行政経験が長く、広東省書記就任2年目の世界的金融危機で、中小を切り捨てると発言し温家宝と対立。温とは春運でも対立。今も質の高い成長への路線転換を捨てないやれる子。

 薄熙来との対立は打黒、紅歌、パイ論とネタに尽きません。メディアを使った論争をライブ観戦出来るのはありがたいのですが、メディアは薄熙来押しの模様で形勢不利。足元の広州市で暴動があり、前述の路線転換は後見の胡錦濤が目立ってバックアップしないあたりが不思議で、勢いは失速気味。これからの巻き返しに期待しますが今回を逃してもまだ2期10年務められるのは現役最年少の強み。

■張高麗 天津市党委書記
 広東省の石油会社から広東省、山東省を経て現職。石油と言えば周永康と繋がりが深そうですが、個人的にノーマークなので語るものがありません。

■張徳江 国務院第三副総理(工業、交通、エネルギー、社会保障、安全生産)

 金日成総合大学経済学部卒という経歴から、同窓の将軍様が中国入りすると必ずお供にはせ参じる北朝鮮とのパイプ役。吉林省、浙江省、広東省党委書記と地方トップを10年以上務め上げたあと、国務院副総理としてインフラや人的資源を担当。

 以前は江沢民に近かったのですが、胡錦濤側についたとチラホラ。ところが先日の事故処理で温家宝の批判を受け、姿を消したのはいかにもマイナス印象が拭えません。引き続き事故処理のトップではあるようですが、何かあったのは確かでしょう。

 担当分野が解決不可能なものばかりで不利ですし、恐らく王岐山が常務副総理になるでしょうから、副総理→全人代委員長は万里や呉邦国で前例があるので、昇格ならこの線かと。

■兪正声 上海市党委書記
 父が天津市長の黄敬、母が北京市副市長を務めた范瑾という100%太子党でありながら、兄の兪強声がアメリカに亡命という下手すれば政治生命終了にもなりかねない汚点で、出世が遅れました。

 湖北省という内陸部のトップでありながら十六大で政治局に選出され、十七大では上海市党委書記に「昇進」。先日の老いを感じさせるコメントが気になりますが、太子党勢力が予想以上に伸張すれば常務委員入りもありえます。

■薄熙来 重慶市党委書記
 現役政治局委員で、最も派手な動きをしている分かりやすい人。習近平が「打黒唱紅」運動を賞賛したのをはじめ、呉邦国、李長春、賀国強、周永康が前後して重慶を訪問し、支持を表明しています。胡錦濤、温家宝、李克強は重慶入りしていないのがポイント。温家宝の政治改革が本気かどうかはともかく、文革の残滓呼ばわりしてますからね。

 打黒を発端とした汪洋とのメディアを使った対立は何度かお伝えしていますが、メディアも常務委員も明らかに薄推し。打黒の実績から普通に考えれば政法委書記、商務部長時代に顔を売っているから国家副主席として習近平を支える、政治的保守派の呉を継いで全人代委員長の線も。

 そして、これが予想になります。配置は一部修正があるでしょうが、顔ぶれはこれで動かないはず。

 2011082201.JPG

 太子党3人、団派3人と均衡させてみました。矢吹先生と同じ顔ぶれですな。前提条件が殆ど同じだから、仕方ないんですけどね。
 
 王楽泉が常務委員入りしない理由は先に述べました。劉延東は単なる人の良いおばちゃんですし、常務委員入りすれば過去政治局委員だった女性党員や孫文の嫁などを超えちゃって釣り合いが取れなくなるので没。

 張高麗は、最近天津から常務委員が出ていないのと、彼でないと困る理由が無いので外してみました。日本のチャイナヲチャに軽く「外してみました」とか言われる張高麗カワイソス。

 太子党は2世だから繋がっている、というよりは思想的な繋がりの方が怖いです。薄熙来が首都北京で血統論をよりどころに頑張っていた「聯動」、李源潮が上海市紅衛兵の幹部、兪正声が黒龍江省で大暴れというお歴々。いわゆる紅衛兵というやつです。

 血統論というのは親が紅ければ子供も紅く、親が黒ければ子供も黒いという、親世代を打倒しつつ自らは守れる便利な理論でした。党内は毛並みの良い二世ばかりで、党内に限って言えばまさに血統論の正しさが証明されつつあります。

 太子党は胡錦濤率いる共青団(青幫)に対して、紅幫と呼ばれたこともありますが、紅歌は単なるノスタルジーではなく、それしか頼るものが無い二世が派手に政治キャンペーンを展開しているという印象です。いかんせん党内に二世が多すぎて受け入れられてしまっているのです。

 文革当時10代だった中国人なら、我々が子供の頃の流行りで盛り上がるように、「あの頃はああだったよなあ」と懐かしんだりもします。私は紅歌活動など痛い政治運動にしか見えないのですが、ある年齢層にとってみればそれほど嫌悪感を抱かせないのかもしれません。

 付き合いのある20代、30代の中国人だって紅歌を歌えますし、幼稚園で習ったと言います。青春真っ只中に文革があった年齢層にしてみれば、童謡やアニメソングのようなものなのかもしれません。

 大穴の孟建柱(中央政法委員会副書記、武警第一政委、国務委員、公安部長)について。

 先日も暴動の起きた内モンゴルに行ってましたし、過去にもウイグル、上海と続けて事故や暴動の仕切りを任されています。ウイグルは王楽泉、上海は兪正声と両者とも格上の政治局委員を差し置いて、です。

 実際に武装警察の指揮を取るのはこの人ですし、政法委副書記は孟と王楽泉で序列が逆転しているなど中央委員ではあるものの権限も大きいのですが、十七大で政治局委員に昇格していない点を考えると「十八大で政治局委員に昇格し、常務副書記を続ける」に留まると思います。

 前任者の周永康は孟と同じ職務にあったのですが、十六大で政治局委員でした。ここが決定的な差なのです。

 今年の六中全会で黄菊以来の政治局委員昇格があればわかりませんけど、一年後にまた政治局常務委員に昇格というのは前例が無いのです。

 さて、ついでに習近平の次の話を。胡錦濤は十七大で李克強を後継者に据えられませんでしたし、二十大(2022年開催予定)に向けて、胡春華、孫政才、周強あたりを政治局委員に昇格させ、「習近平の後」に子飼いを送り込む方針に変えたのだと思います。

 胡春華は北京市党委書記への転出が何度か言われています。政治局委員でないと北京市党委書記にはなれませんから、まず十八大で政治局入りし、十九大で中央書記処入りして総書記見習いという算段でしょうか。

 今後、党大会が近づくにつれ、より精度の高い予想ができるようになるでしょうが、そんなのは予想ではなく答えを書き写しているのと同じ。まあ、ご笑覧ください。
posted by aquarelliste at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 十八大 | 更新情報をチェックする
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